未来派図画工作のすすめ/自由ノート

記憶の水槽

角砂糖を見るとカフェを思い出す。白衣を見ると注射を思い出す。 人それぞれ連想の仕方は異なるとは思いますが、私たちの記憶は単体で保存されているわけではなく、関連する記憶同士が繋がって保存されているらしいのです。

それらの記憶はまるで水槽の中に入れられるように、どんどん沈んでいく。最近の出来事はまだ水面近くにありますが、数年前の事はずいぶんと深い場所まで沈んでいる事でしょう。 でも、ちょっとしたきっかけで、その水槽はかき混ぜられます。

たとえば思い出の写真を見たりすると、それに関連する記憶が、連なって水面近くまで浮上するのです。その記憶が心に残るものであればあるほど、すっかり忘れていた事まで引き連れて浮上してくるに違いありません。そしてそのとき、記憶の水槽の水は、こぼれんばかりに大きく揺れているはずです。この揺れが感動を作り出すのではないでしょうか。

自分の経験と照らし合わせて、想像し、思い出し、予測することで、感動が生まれます。こう考えると、思い出を作れば作るほど、水は大きく揺れて、感動も大きくなる。年を取って涙もろくなるのは、思い出の数が多くなるから、かもしれません。

Photo by Sime Basioli on Unsplash

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