未来派図画工作のすすめ/自由ノート

「奥ゆかしさ」という言葉には、日本の一つの美意識が現われている。完全に隠れているわけでもなく、はっきりも見えない。奥にある何か。その静かで深いたたずまいに惹かれるのである。

西洋では空間をさえぎるために、壁やドアには絶対的な遮断性を求める。しかし日本では、ふすまや障子といった、薄い膜のような、いわば相対的で変容可能なものを使用してきた。

薄い膜の重なりは、そのすき間に「間」を作り出す。それはタイミングであり、スペースであり、心でもある。すべての距離感の均衡。存在と認識の距離を相対的に変容させるものだ。

私達は、自然や人、物、事、全てのものとの間に「間」を作る。その「間」がどんなものかで、対象への価値観が変わる。幾層にも重なった「間」の美しさが、奥ゆかしさを作りだす。

奥そのものの美しさではなく、「間」の美しさが重要なのだ。 それは過程と結果の関係に似ている。結果の美しさは、過程の美しさなのだ。結果へたどりつく道。茶道。華道。武士道。

そう考えると、人とは、人の歩む道。 生きてから死ぬまでの「間」が人間。

Photo by Fakurian Design on Unsplash

前の投稿
人知れず忘れる
次の投稿
あーうれしいわ

Latest

Random Pickup

メニュー