未来派図画工作のすすめ/自由ノート

きみはどうくつをもっているじゃないか
自分で、きれいだと思うものは、なんでもぼくのものさ。その気になれば、世界中でもな。

なんでも自分のものにして、持って帰ろうとすると、難しいものなんだよ。ぼくは、見るだけにしてるんだ。そして立ち去る時には、それを頭の中へしまっておくのさ。ぼくはそれで、かばんを持ち歩くよりも、ずっと楽しいね。 スナフキン

スナフキンはモノに執着しない。いや、どちらかというと所有する事に恐怖を感じているようにも見受けられる。この「きみはどうくつをもっているじゃないか」という言葉には彼が世界に向けたまなざしがどんなものであるのかが、凝縮されていると思う。

私たちは世界をモノ化して、境界線を刻んで所有しようとする。その果てしない欲求は、輝く小さな宝石から、国境という巨大な土地まで、様々なものに向けられる。本来誰のものにもならないものでさえ、貨幣経済というシステムの中では、商品となってしまうのだ。

スニフはムーミンとちょっとした冒険をして、洞窟を見つける。その洞窟発見はスニフにとってとても晴れ晴れしい誇り高いもの。スナフキンがスニフにたいして「きみはどうくつをもっているじゃないか」と諭すのは、その誇り高い気持ちこそが、スニフにとっての宝物なんだよ、という事を意味しているのだろう。

でも、このエピソードが出てくる「ムーミン谷の彗星」というお話では、小さな貝殻や足輪を大切にしたり、ムーミンが旅に出るときにムーミンママがいろいろなものを持たせたりするシーンが丁寧に描かれている。モノに執着しないという気持ちと、大切にするという気持ち、そういった相反する気持ちが混ざり合うあたりが、人間性なんだろうと思うし、共感が持てるんですよね。

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