屋根の日本史
原田多加司

人が自然の中で暮らしていくためには、自然との仕切りが必要になります。ゴットフリート・ゼンパーが19世紀に出版した「建築の四要素」にも、屋根・皮膜(壁)・炉・土台が取り上げられていますが、その中でももっとも重要なものが、屋根でではないでしょうか。屋根は夏の日差しを遮り、雨や雪から守ってくれる存在。壁と違ってプライバシーは確保できませんが、屋根は人間が生存していく上で必要最低限の自然との仕切りになるはずです。

この本は、建築の「屋根」に焦点を当てて、風土や文化の側面から日本の古建築の歴史について語っている一冊でした。縄文時代の竪穴式住居は屋根そのものが住居であるという点や、屋根は単に寒暑や雨露をしのぐためのものではなく、象徴性、身分の格差、芸術性といった多くの属性が形になったものである、という屋根に対する独自の考察です。

ということは、屋根は人の暮らしや思想が形となって現れたもので、屋根を見ればその土地の風土や文化、人々の営みなども見えてくる証として捉えることができます。さて今の日本の屋根から何が見出せるのでしょう。そんなことを新幹線の車窓に流れる住宅地を見ながら思ったのでした。

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屋根の形は世界中を見渡しても実に様々であり、その国の気候風土や伝統、生活様式、また材料、技術などの違いによって、多くの制約を受けながらも今日に至っている。原田多加司著「屋根の日本史」
日本の建物の歴史は縄文時代の竪穴住居にはじまると考えられるが、その最初の建物の形態を決定していたのは屋根だけだった。原田多加司著「屋根の日本史」
屋根が、建築空間とその上空を仕切り、自然と人間の生理の矛盾を緩和するという本来の目的から離れたとき、屋根は単に寒暑や雨露をしのぐためのものから、象徴性、身分の格差、芸術性といった多くの属性を負う運命に変わっていった。原田多加司著「屋根の日本史」
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