未来派図画工作のすすめ/自由ノート

偶然を意図して作る

私が始めて作ったコンピューターグラフィックスは、真っ黒な画面に次々とランダムに白い点が発生する星空のようなものでした。それはごくごく簡単なプログラムです。しかしそのときに始めて出会った乱数というものが、今でも私を魅了し続けています。(もう20年前にもなりますが・・・)

サイコロを投げれば、出てくる数は偶然に決まります。当たり前の事ですが、自然の中は様々な偶然で溢れています。いってみれば私達の生活も偶然が重なって作られたようなものです。しかし、偶然は人間にとって生活を脅かす不安定要素となります。ですから機械というものはその偶然をとりはらい、画一的で反復的な機能「安定」を得るために発明されました。

機械は、予定通りの一定の働きをするものといっていいでしょう。 しかし、コンピューターの出現によって、新しい考えかたが出来るようになりました。逆に偶然をつくり出せるようになったのです。これはそれまでの機械ではつくり出そうとなしなかった、そして作り出すことが困難だった、「偶然」を反復的に限りなく作り出すことが出来るようになりました。

試しにランダムな数字を次々と思い浮かべて書き留めてください。これが以外に難しいのです。なぜなら偶然は作るものではなく、起こること。意図的に偶然をつくり出すのはとても難しいものなのですね。

今私はこの偶然性を取り入れた映像というものに大変興味があります。始まりから終わりまで直線的な線で結ばれるリニアな映像ではなく、いつ始まってもいつ終わっても良いノンリニアな映像へ。ゲームともまた違った参加性を持った新しい映像。それはきっとこれまでのように、記録して再生する映像ではなく、見ている瞬間にリアルタイムに生成するものになるとおもいます。

そのためには高度なハードとソフトが必要になります。そしてその技術を皆で共有する必要があります。現状ではまだまだ簡単に作れるものではありません。しかしながら、最近の技術の進化とオープン化を見ていると、こういった映像を誰もが作れる時代は、もう夢ではなく、現実的なレベルに近づいたと思うのです。かなり希望的な予想ではありますが。

最先端の技術を使って、偶然を生み出す。ちょっと不思議な感覚ですね。でも、何か新しい表現に出会える予感がするのです。 そして作れるかもしれない予感がするのです。

 

Photo by Markus Winkler on Unsplash

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