未来派図画工作のすすめ/自由ノート
いつ完成するの?
最近、数人のデザイナーや作家の方に「どんな時に完成したと実感しますか?」と聞いてみました。
締め切りが来れば完成したことになるという人もいれば、ずっと完成した心地がしないという人もいる。 イベントや展覧会などを企画されている学芸員の方は、「自分が想像していた状況よりも良い状況になった時」完成を感じるという。
なるほど、これは面白い感覚。この場合、自分一人では決して完成しない。いくら頑張っても完成の一歩手前までしか作れない。でも、そこまでベストなものが作れれば、あとは参加する人が、自然に完成させていく。
とある作家の方は「作りはじめた時」完成を感じることがあると言います。作品に手を付けた瞬間に、直感的に完成が見えてくるような感覚だそうです。書の世界などはまさにそうなのかもしれません。
筆を下ろした瞬間に書き終わる。私も良く考えてみると、お気に入りの作品は、ものすごく短時間で作り終わっています。逆に想像よりも時間がかかってしまった作品は、自分の中ではちょっとイマイチなものが多い。色々付け加えたり、修正しているうちに、なんだか最初の初期衝動がぼやけてしまうのでしょうか。
それにしても、もし作りはじめた時に完成するという事があるとしたら、頭の中は常に作品を作り続けている状態にあるということですよね。実は、その作品を作るずーっと前から、その作品を作るために考えている。
だからある意味で、作り出される全てのものは、その人の生きてきた時間全体が、製作期間なのかも知れません。 そしてその作り手の人生全体が、見る人の人生全体と交差して、初めて完成する。いや、交差することが作ることの目的なのかも知れない。そう考えると、締め切りの短い仕事でも、すこしは落ち着いて取り組める?(いや、それは無理!)